18歳になった瞬間から、親の同意がなくても一人でクレジットカードを作ったり、高額なローン契約を結んだりできるようになる——2022年4月に成年年齢が18歳へ引き下げられてから、早くも4年が経過しました。
「もう立派な大人だから自分の意志で自由に契約できる」という自立心がある一方で、社会経験の少なさや契約知識の不足につけ込まれ、深刻な金銭トラブルに巻き込まれる18歳・19歳が後を絶ちません。
国民生活センターが公表したデータによると、2025年度における18歳・19歳の消費生活相談件数は、統計開始以降で「過去最多」の水準に達しました。成年年齢引下げから数年が経ち、制度の目新しさが落ち着いた現在でも、若者を狙う悪質な業者の手口は巧妙化し続けています。
この記事では、国民生活センターのデータをもとに、18歳・19歳が巻き込まれやすいトラブルの具体的な手口、狙われやすい原因、騙されないための見分け方、そして万が一の際の対処法や相談窓口まで、分かりやすく徹底解説します。
数字で見る18歳・19歳の消費生活相談|過去最多を記録した背景
まずは、国民生活センターのデータから18歳・19歳を取り巻くトラブルの現状を確認しましょう。
■ 相談件数の推移(2021年度〜2025年度)
契約当事者が18歳・19歳の全国消費生活相談件数は、以下のように推移しています。
- 2021年度:8,536件
- 2022年度(引下げ直後):10,027件
- 2023年度:9,788件
- 2024年度:9,082件
- 2025年度:10,250件(過去最多)
法改正直後に1万件を超えた後、一時的に減少傾向を見せていたものの、2025年度には再び1万件を突破し、過去最高を更新しました。
■ トラブルの二大巨頭は「美」と「金」
相談件数が増加するなかで、トラブルのジャンルには明確な傾向があります。相談全体の中心を占めているのは、成年年齢引下げ以降ずっと変わらない「美(美容・健康関連)」と「金(副業・就職・もうけ話関連)」の2つです。
若者の「綺麗になりたい」「自分磨きをしたい」という気持ちや、「生活費を稼ぎたい」「就職活動が不安」という切実な悩みに付け込む手口が定着しています。
実際に急増している!若者が狙われるトラブルの典型手口
具体的にどのようなトラブルが起きているのか、国民生活センターに寄せられた相談事例をもとに、若者が特に巻き込まれやすい代表的な手口を詳しく見ていきましょう。
1. 「無料セミナー」から誘導される就活・キャリアサポート商法
大学生や専門学生をターゲットに、「現役人事による無料就活カウンセリング」「ES添削セミナー」などと銘打ってWeb会議(Zoomなど)に誘い出します。面談が始まると、「今のあなたのガクチカでは大手企業は絶対に受からない」「特別な選考ルートがある限定サロンに入会すべき」と不安を煽り、最終的に数十万円〜100万円近い高額な就活コンサルティング契約を迫る手口です。学生側は「就職に失敗したくない」という焦りから、断り切れずに契約してしまいます。
2. 憧れを悪用する「オーディション商法・レッスン契約」
SNSやWeb広告を通じて「モデル募集」「声優・タレントオーディション」などに応募させます。後日「合格です」「あなたには特別な才能がある」と褒め称えた上で、「プロとしてデビューするにはレッスン料や宣材写真代、マネジメント登録費として年間50万円が必要」などと高額な契約を結ばせます。実際には仕事の斡旋はほとんどなく、借金だけが残るケースが頻発しています。
3. 美容医療・脱毛エステ・セルフホワイトニングの契約トラブル
SNS上で「初回限定0円」「月々1,980円で通い放題」といった格安広告を打ち出し、店舗へ来店させます。店舗に行くと「広告のプランは効果が薄い」「今日契約しないとこの特別割引は使えない」と個室で何時間も長時間の勧誘を行い、総額数十万円にのぼる複数年ローンを組ませる手口です。最近では、セルフエステやセルフホワイトニングの機器購入・定期コース契約をめぐるトラブルも急増しています。
4. 「スマホで簡単作業」をうたう副業・情報商材詐欺
「スマホで動画を見るだけ」「コピペ作業で初月から30万円稼げる」などと謳い、LINEグループへ誘導します。最初は数千円程度のマニュアル代を払わせ、その後「より確実に稼ぐための特別サポートプラン」として数十万〜数百万円の高額プランを勧められます。「代金は稼いだ利益から後で返済できる」と言葉巧みに誘導され、消費者金融で借金をさせられて支払ってしまう被害が後を絶ちません。
なぜ18歳・19歳が集中して狙われるのか?3つの構造的要因
なぜ、これほどまでに18歳・19歳が集中して悪質業者のターゲットにされてしまうのでしょうか。主な理由は以下の3点です。
理由1:最大の防御壁「未成年者取消権」が使えなくなったこと
かつては、未成年者が親の同意を得ずに結んだ契約は、民法で定められた「未成年者取消権」を行使することで、原則として一方的に取り消すことができました。しかし18歳成年となった現在はこの法的な保護が使えません。悪質業者は「一度サインさせれば、法的に解約されにくい相手」として18歳・19歳を明確にターゲットにしています。
理由2:契約知識の不足と「大人としての自負」のギャップ
高校を卒業して社会に出たり大学へ進学したばかりの時期は、契約書の重要性やクレジットカードのリボ払い、個別クレジットの金利手数料に関する知識がまだ十分ではありません。同時に「もう成人だから自分で決められる」「親に相談するのは恥ずかしい」という自負が働き、怪しい勧誘を受けても周囲に相談せず一人で抱え込んでしまう傾向があります。
理由3:SNSを通じた接触の容易さと警戒心の薄さ
現在の18歳・19歳は、情報収集の大半をSNSで行っています。タイムラインに流れてくるインフルエンサーのPR投稿や広告、親近感を装ったダイレクトメッセージ(DM)に対して警戒心が薄く、悪質な勧誘であっても日常の延長線上で簡単に受け入れてしまう環境があります。
トラブルから身を守るための契約防衛チェックリスト
悪質な消費者トラブルから自分自身を守るために、契約を結ぶ際は以下の鉄則を必ず徹底してください。
- 「今日だけの特別価格」「あなただけ特別」という言葉を信用しない
悪質業者は、その場ですぐに契約させようと時間的プレッシャーをかけてきます。「今日決めないと損をする」と言われたら、むしろ危険なサインだと捉え、絶対にその場でサインせず持ち帰りましょう。 - 「月々払い」ではなく、必ず「支払総額」と「利息」を確認する
「月々3,000円なら払える」と思わせるのが業者の常套手段です。契約期間は何ヶ月なのか、金利手数料を含めた総額はいくらになるのかを必ず計算し、契約書面で確認してください。 - 「一度持ち帰って家族に相談します」ときっぱり断る
断るのが苦手な方でも、「自分の一存では決められない」「親や詳しい人に確認してから決める」と伝えることで、強引な勧誘を一度ストップさせることができます。 - 契約書の控えや利用規約の画面を必ず保管する
Web上の契約であっても、利用規約や解約条件が書かれた画面をスクリーンショット等で保存しておかないと、後からトラブルになった際に証拠を示すことが難しくなります。
万が一契約してしまった場合の法的救済と相談窓口
万が一契約してしまった場合でも、以下の方法で解決できる可能性があります。
■ クーリング・オフ制度
エステや語学教室などの契約であれば、書面受取日から原則8日以内(マルチ商法等は20日以内)なら無条件で解約できます。
■ 消費者契約法による取消し
嘘の説明を受けたり、強引に引き止められた場合は、クーリング・オフ期間を過ぎていても契約を取り消せる場合があります。
■ 困ったら「188」へ相談
局番なしの「188(いやや!)」に電話すると、最寄りの消費生活センターにつながり、専門の相談員からアドバイスを受けられます。若者専用の「消費者ホットライン18+」も利用可能です。
まとめ:大人としての第一歩は「契約に慎重になること」
成年年齢引下げから4年、18歳・19歳の消費者トラブルは過去最多を記録し、依然として警戒が必要です。
大人になることは自由を得ると同時に、自らの契約に責任を持つことでもあります。「自分だけは大丈夫」と過信せず、魅力的な誘いほど冷静に見極め、少しでも怪しいと感じたら迷わず公的窓口や周囲の大人に相談しましょう。
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