「〇〇市役所ですが、災害時の避難支援のためにご家族の在宅状況を確認させてください」「息子さんはいつも何時頃にお帰りになりますか?」
ある日突然、固定電話にかかってきたこんな一本の電話。何気ない問合せのようにも思えますが、実はこれ、特殊詐欺の犯人グループが行っている下見電話、通称「予兆電話(アポ電)」かもしれません。
警察庁の統計によると、2025年上半期だけで確認された予兆電話はなんと165,292件。前年と比べて2倍以上に跳ね上がっており、今や全国で1日に約900件以上もの怪しい下見電話がかかってきている計算になります。
「お金の話をされたわけじゃないから大丈夫」「丁寧な口調だったから市役所の人だと思った」と安心して情報を答えてしまうと、後日、巧妙に作り込まれた本番の詐欺電話がかかってきたり、自宅を狙われたりする危険性が一気に高まってしまいます。
この記事では、急増する「予兆電話」の恐ろしい仕組みから、犯人たちが狙う情報、なぜ予兆電話段階での対応が重要なのか、そして離れて暮らす大切なご家族を守るための優しい防犯対策まで、じっくり丁寧に解説していきますね。
予兆電話とは?基本の仕組みと急増している背景
まずは、「予兆電話(アポ電)って一体なに?」という基本から見ていきましょう。
警察庁では、電話の相手に対して住所、氏名、資産状況、利用している金融機関、家族構成などを探ろうとする、特殊詐欺が強く疑われる電話のことを「予兆電話」と定義しています。
これは例えるなら、泥棒が家に入る前にインターホンを押して「留守かどうか」「犬がいるか」を確認する『下見作業』と同じものです。
本番の詐欺(お金をだまし取る電話や訪問)を確実に成功させるために、犯人グループは事前にターゲットの情報を入念に集めているのです。
地域別のデータを見ると、東京都が最も多く、次いで埼玉県、千葉県、愛知県、兵庫県と続いており、都市部やその周辺エリアを中心に広範囲でかかっていることが分かります。
なぜこれほどまでに予兆電話が急増しているのでしょうか? その背景には、近年多発している「ニセ警察詐欺」をはじめとする特殊詐欺の凶悪化・巧妙化があります。
警察官や検察官を名乗ってお金を要求する手口では、あらかじめ「家族が同居しているか」「一人になる時間帯はいつか」「どの銀行にいくら預けているか」を把握しておかないと、途中で家族に相談されて失敗してしまうからです。
どんなことを聞かれるの?予兆電話の典型的なパターン
予兆電話をかけてくる相手は、誰もが安心してしまうような「公的機関」や「身近な事業者」を装って電話をかけてきます。
代表的な手口のパターンを見ていきましょう。
1. 公的機関を名乗る「アンケート・手続き」確認
市役所、区役所、年金事務所、税務署などを名乗り、「還付金の手続きの事前確認です」「防災計画のためのアンケートです」といった名目で電話がかかってきます。
「現在、お一人でお暮らしですか?」「口座のある金融機関を教えてください」といった質問を自然な会話の中で混ぜ込んできます。
2. 家族の勤務先や警察を名乗る「在宅確認」
「息子さんの会社の上司ですが、急用がありましてご在宅ですか?」「〇〇警察署ですが、近所で事件があったためご家族の状況を確認しています」などと言って、家族の在宅パターンや帰宅時間を探ろうとします。
「〇時頃なら一人になります」と答えてしまうのは、犯人にとって最も欲しい情報を与えてしまうことになります。
3. 業者を名乗る「アンケート・点検」案内
「大手電力会社の委託で、分電盤の点検のご案内に回っています」「不用品のリサイクル買い取りを行っています」といった事業者になりすますケースもあります。
「家に価値のある金品や貴金属があるか」「日中家に誰がいるか」をさりげなく聞き出そうとします。
予兆電話に危険性はある?知っておくべき2つのリスク
「でも、ただ電話で答えただけなら、直接お金を取られたわけじゃないし大丈夫では?」と思うかもしれません。
しかし、予兆電話に対応してしまうことには重大なリスクが存在します。
リスク1:「騙しやすいターゲット」としてリスト化される
予兆電話で素直に質問に答えてしまうと、犯人グループの内部で「この家は電話に出やすく、質問に素直に答えてくれる(=騙しやすい相手)」という名簿(カモリスト)に登録されてしまいます。
一度リストに載ってしまうと、数日〜数週間後に「警察官」「銀行員」「息子」などを名乗る本番の詐欺電話が、あなたの答えた情報を元にピンポイントでかかってくるようになります。
「あなたの長男の〇〇さんは今会社ですか?」など、予兆電話で得た情報をチラつかせて信頼させてくるため、本番で騙される確率が跳ね上がってしまうのです。
リスク2:一人の時間帯を狙った訪問や強盗のリスク
在宅時間や家族構成を教えてしまうと、「今、家には高齢者一人しかいない」というタイミングが筒抜けになります。
詐欺の電話だけでなく、偽の点検業者を装った訪問や、悪質な強盗被害に繋がってしまう危険性すら否定できません。
予兆電話段階で防ぐ!今すぐできる5つの優しい防犯対策
予兆電話は、言い換えれば「被害に遭う前に怪しいと気づける最大のチャンス」でもあります! ご実家のご両親やご自身を守るために、今日からできる5つの防犯対策を取り入れましょう。
| チェック項目 | 具体的に取れるアクション |
|---|---|
| 1. 常時留守番電話にする | 固定電話は「常に留守番電話に設定」しておきましょう。犯人は自分の声が録音されるのを嫌うため、留守電になった瞬間に電話を切ります。知っている人の声が聞こえてから電話に出る習慣をつけましょう。 |
| 2. 家族構成や在宅時間を言わない | 電話口で「家族がいつ帰るか」「一人暮らしか」「資産がいくらあるか」を聞かれても絶対に答えてはいけません。 |
| 3. 「防犯対策電話録音機」の設置 | 多くの自治体(市区町村)では、呼出音が鳴る前に「この通話は録音されます」と警告メッセージを流す「防犯電話録音機」を無償貸与しています。役所の防犯課などに問い合わせてみましょう。 |
| 4. 不審な電話はすぐ一度切る | 公的機関を名乗られても、話の途中で一度電話を切り、自分で調べた代表電話番号(市役所の代表番号など)へかけ直して真偽を確認しましょう。 |
| 5. 受けた電話の内容を家族で共有 | 「今日、市役所からこんな電話があったよ」と普段からご家族で話し合っておくことで、本番の詐欺電話がかかってきたときに家族みんなで警戒できます。 |
不審な電話を受けたら…一人で悩まない相談窓口
「うっかり家族構成を話してしまったかも…」「怪しい電話が続いていて不安」という場合は、決して一人で抱え込まず、すぐに以下の専門窓口へご相談ください。
- 警察相談専用電話「#9110」:
全国共通の警察相談ダイヤルです。事件や詐欺に発展する前の「怪しい電話がかかってきた」段階でも、親身になって相談に乗ってくれ、地元の警察署と連携して見守りを強化してくれます。 - 迷惑電話対策相談センター(でんわんセンター):
総務省が推進している迷惑電話対策の相談窓口です。不審な電話に関する相談やアドバイスを受けることができます。 - 消費者ホットライン「188(いやや!)」:
点検商法や契約トラブルに関する不審な電話の場合は、お近くの消費生活センターへ繋がる188へご相談ください。

まとめ:予兆電話に気づいて、大切なご家族を温かく守ろう
予兆電話は、私たちの大切なお金や暮らしを脅かす特殊詐欺の「第一歩」です。
しかし、この段階で「あれ? おかしいな」と気づき、不用意に答えない対応ができれば、詐欺被害を未然に防ぐ最強のバリアになります。
もし離れて暮らすご両親やご祖父母様がいらっしゃるなら、今週末に「最近、市役所や警察を名乗る怪しい電話が増えているみたいだから、電話は常に留守電にしておいてね」と、優しく声をかけてあげてくださいね。
日頃の温かいコミュニケーションとちょっとした防犯対策で、大切すご家族の平和で笑顔あふれる暮らしを守っていきましょう!
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